ショパン エチュード「黒鍵」〜ある日のピアニストの気分転換〜


ある日の練習の合間に気分転換でショパンエチュード「黒鍵」を弾いていました。

練習曲と言えどもショパンらしい美しさが煌めく1曲で、学生の頃からとても好きな作品です。
黒鍵のエチュードはその名の通り、右手は全て黒鍵のみを弾くように作られています。

ショパンの生きた19世紀ロマン派の時代は、ピアノという楽器が著しく進化した時代です。
そのため、モーツァルトやベートーヴェンの古典派の時代のピアノ作品ではなし得なかった革新的な挑戦が沢山生まれました。

音域の幅、強弱のダイナミクスレンジの幅が広がったことによって豊かな表現が可能になり、それに対応する演奏技術・表現をピアニストたちは探求し続けたのです。
意欲的で野心的な作品が多く生まれた時代に呼応するように、ショパンもまた革新的なピアノ作品を多く生み出したピアニストの1人でした。

黒鍵のエチュードでも革新的な挑戦がありました。
ピアノの音階やアルペジオの指番号は全て決まっており、それまで親指で黒鍵を親指で弾くことは規則的に禁止されていたのですが、親指で黒鍵を演奏することを認め、全く新しい指使いを編み出したのでした。


今年の試みのひとつ、読み聞かせのようにクラシックの小品を聞いて、感じて、楽しんで、親しむきっかけを作ること。
「よくばりアソートコンサート」ではピアノの周りに集まって、間近で指が動く様子も見ながら楽しんでいただいています。

黒鍵のエチュードも、そのうちプログラムに取り入れてみたいと思っていますので、ぜひ楽しみにしていただければ幸いです。

コンスタントに続ける活動の中で誰か一人でも、クラシック音楽に慣れ親しむ下地となるような経験作りの場となれば…
という淡い願いを抱き、試みています。

かれこれ35年に及ぶピアノ人生。
私を育ててくれたクラシックの世界への恩返しとして、私なりにできることをしていきます。