役割をもたらされること
0歳児、1歳児の子たちは感覚や身体的な発達の黄金期。
2歳児後半あたりからの幼児へと向かう子たちは、それらの成長に加えて、前頭前野の発達が始まることで心がぐんぐん育つ時期に差し掛かります。
語彙も多く出てくる時期なので、言葉のコミュニケーションを促しながら、お友達とのやり取りの中で、様々な感情を味わっていきます。
人との関わりによる化学反応が起こり、優しさや思いやりを体験したり、時には衝突も起こります。
また、意欲の引き出され方にも人間らしさが芽生えます。
そのひとつに「役割をもたらされること」があります。
「3色ボード打ち」は、集中力や判断力をフル活動させて行うちょっと高度な即時反応の活動。
どのタイミングで、何色の指示が出るのか、ドキドキしながら合図を待ち、そして指示された色のボードを叩く。
ビートを刻みながらいつ出されるか分からない合図を聞き、判断し、考えた通りに体を動かすという一連の流れは、この年頃の子どもたちにとっては難易度が高く、頭では分かっているのに違う色のボードを叩いてしまったりして「できない!もうやだ!」となる子も中にはいます。
一時そのフラストレーションに耐えられず、ボード打ちをやることを拒否していた子がいました。
強制はしないので、他の子がやっている姿を見たり、お母さんや先生がやっている所を見てもらっていました。
ある日のレッスンで初めてボード打ちをする子がいた時に、張り切ってスティックを配っていた様子を見て
「ボードを打つお手本を見せてくれる?」
と試しにお願いしてみると、「いいよ!」と前向きな気持ちでやって見せてくれました。
上手くいかないことに対して萎んだ意欲も、「役割がもたらされる」という別の角度からの作用によって、新たに芽吹くことがあります。
自分の存在意義を感じることは、社会という集合体で生きる人間にとってモチベーションの源。
このような意欲の引き出され方は、人間らしい心や思考が発達してくる2歳児クラスの後半に差し掛かった時期だからこそだなと、成長を感じる瞬間でした。
そして、お手本を見せてくれる子を見て、思わず一緒に参加する子、じーっと観察する子、様々な関わりが生まれ、化学反応が起こります。
リトミックのレッスンは、教えるのではなく、子ども自らが学び、育っていく時間。
周りの大人は、私も含めて子どもの中に既にある潜在的な力を信じて見守り、時々背中を押して、支えます。
子どもたちが健やかに育っていく姿はエネルギーに溢れ、美しく、胸を打たれます。