幼児教育科グループアンサンブル〜アクティブラーニングの実施で見えたもの〜
短大幼児教育科の前期授業で担当したグループアンサンブルの成果発表が無事終了しました。
選曲、楽器の選定、各楽器の役割、リズムパターン、曲の構成、楽器の配置…
それら全てを自分たちで考え、話し合い、段取りから発表まで行い、演奏が上手くできたなどの目に見える成果よりも、15回の授業を通して形にしていくプロセスや、一人一人のチームでの役割や貢献度に焦点を当てることが狙いのアクティブラーニングの授業でした。
最初は「ディスカッションって何?!先生が主導してよ!」という心の声がダダ漏れで戸惑いの嵐だった学生たちも、徐々に自分たちが主体となって進行していく姿勢が見られました。
毎回の授業アンケートの内容では、初回で出てくる言葉と言えば「みんなで楽しくやりたい」という漠然としすぎるワードばかりでしたが、回を追うごとにグループワークの中で自分たちの課題を自ら見つけて、より良いアンサンブルにしていこうという気持ちがどの学生からも見られるようになり、具体的な言葉が出てきて深みを増していく様子から、アクティブラーニングの効果を実感しました。
「お互いが意見を出し合って進めていくのが面白い」
「失敗しても教え合いながら進めていくのが楽しい」
「最初は必死だったけど周りの音も聞こえるようになってきてアンサンブルが楽しくなってきた」
というポジティブな感想が目立つようになったことも素敵だと感じます。
「今は学生という立場で自分たちが楽しむことを中心に考えているけど、ゆくゆくは保育者としてどのように子どもたちと楽しむかを意識していきたい」と記載していた学生もいました。
具体的な問題提起が出てくるようになると、次のステップとして具体的な課題解決の方法をディスカッションの中で引き出していきます。
講師側が使用楽器を決めて、リズムや副旋律を考えて整った楽譜を配って、練習プランを提示して指導する..という従来の指導はある意味お互いにとって楽ですし、演奏もある程度綺麗な形として整います。
しかしながら自分たちで話し合い、決めて、更に「なぜそのように決めたのか」「どのような工夫を、どのように実現しているのか」という部分まで落とし込んで言語化していくことに重きを置くことで、Howの引き出しを増やし、即戦力や自信に繋げていくことを目指します。
つい口を挟みたくなることがあっても講師側も学生を信じて見守りの姿勢を大切にしました。
見守りとサポート、その塩梅がなかなか難しいと感じる場面が多くありました。
「ここについてどう思う?」というような着目点の投げかけは行うけれど、答えを導き出すのはあくまでも学生たち自身なのです。
こうして1から全て学生達が作り上げていく経験は、保育現場でいつか必ず力を発揮する時の土台になるはずだと信じています。
また、保育現場の音楽活動では「音楽を聴かせること」が主たる目的ではなく、音楽を手段として子どもたちにどのような経験や体験を持たせるかという目的や狙いが大きなポイントになってきます。
そして、生活発表会や保護者面談などの場では、成果そのものに加えて、保護者が見られないそこに至るまでの過程や様子を言葉で伝える必要があります。
そのため、ホールでの演奏の前に、グループとしてどのような目標を掲げて、その実現のためにどのような工夫を、どのような方法で表現するのか、といったことを観客に向けて話してもらいました。
「見えないものを言葉で表現する」ことの難しさや大切さを実感し、少しでも多くの引き出しを手に入れて卒業に向かってほしいと願います。
成果発表の後にいくつかのアンケートを実施しましたが、その中で「この授業を通して自分はグループにどのような貢献をしたか」という質問に対する回答を見ていると、それぞれが意識していたこと、自分の持ち味を生かし、自分なりに行動を起こし役割を全うしようとしていたことが色々と見えてきて、大変有意義でした。
演奏面で引っ張ろうとしていた子、演奏技術に自信がない分アイディアを出すことで貢献しようとしていた子、みんなの意見をまとめて進行した子、グループの雰囲気をより良くしようと努めていた子、、
講師側も授業の中で見えなかったものをこのアンケートを通して見ることができ、「見えないものを言葉で表現する」大切さを改めて実感しました。
近年様々な場面でアクティブ・ラーニングが注目されているものの、実際効果的に行うためには指導者側の力量、人的・物的環境要因も大きく影響します。
今回は15回にわたる継続的活動を講師3人がチームを組んでの実施という授業としてはかなり贅沢な状況でした。
このような挑戦的な現場に携わらせていただけたことにも感謝しています。