ねずみくんのチョッキ展~想像力のおくりもの~
もう半年近く前の5月のこと。
「ねずみくんのチョッキ展 〜想像力のおくりもの〜」に行きました。
わが子たちも何度も読んだ「ねずみくんのチョッキ」ですが、まさかシリーズ41冊も出ているなんて知りませんでした。
大学時代に知り合った奥様と二人三脚で絵本作りは行われ、なかえよしをさんが文を、奥様の上野紀子さんが絵を担当されていたとのことですが、奥様が亡くなってからはパソコンでイラストを分解し再構築するという手法で今も尚、お二人の共同作業は紡がれ続けています。
学生時代から絵本作家の原画展に行くのが好きでした。
原画のあたたかみに触れるこのができるのはもちろんのこと、一番の魅力は作家のコンセプトや思いを深く知ることができるから。
そしてそのコンセプトや思いに深く共感することが多くあり、確実に今私が携わっている活動のベースにもなっています。
ねずみくんのチョッキ展での、ご夫婦の創作活動のコンセプトもまた、深く共感できるものばかりで、キッチン・ワルツやリトミックの活動で私が大切にしていることにも通ずるものが多々あり、書かれた言葉の一つ一つに胸を熱くしながら噛み締めていました。
子どもたちの身のまわりにあるちょっとしたできごとをテーマにすること。
絵や文章における省略のことと、空間を生かすこと。
その省略が逆に子どもたちの想像力をそだてることになること。
あるがままの個性を生かすこと。
暮らしの中の身近な出来事を題材に、そして繰り返し行う過程で子どもたちの心のベースが培われたりポテンシャルが引き出され、親と子のよろこびが花開いていくものだということを再認識しました。
見えないものを見ることができるのが想像力。
誰もが持っている力を使って、自分だけの物語の世界を広げることができる力。
そして現実世界では人の心を思いやる力にもつながるものです。
ご夫婦がねずみくんシリーズのフォーマットとして掲げられていたことに「ちいさな動物から大きな動物まで多く登場させ、その動物の特徴や個性を生かすこと」というものがあります。
展示の中で「ぞうさんとねずみくん」の原画の紹介文では次のようなねずみくんの言葉が書かれていました。
ちいさいことは、ぼくのコンプレックスです。
とくにぞうさんと比較されたらたまりません。
でもこのお話で、ぞうさんはぞうさん、ぼくはぼくなんだと、すこし自信がつきました。
「あるがままを認め、生かすこと。」
これがどんなに大切なことで、自分を支える大きな力になるか、まだ絵本を読んでいる時の子どもたちにはわからないかもしれません。
でもきっと、この絵本と出会って救われる子や勇気をもらえる子がいるはずなのです。
絵本というツールの魅力や効果を最大限引き出して、子どもたちと対等にコミュニケーションを図ろうとする偉人たちの姿勢を見ると、読み手として心を動かされ、そしてまた、表現者としても心揺さぶられ、たとえ草の根運動だとしても妥協せずこの道を進んで行こうという気持ちになります。