リズム遊びから始まる日常的な音楽活動~親子リトミック実践講座~

2021年7月、板橋区グリーンホール1階ホールにて、板橋区の児童館職員の方々を対象とした親子リトミック講座の研修講師を務めました。

コロナ渦の今、歌を歌ったりふれあい遊びや人と関わりながら行うリトミックの活動は、なかなか開催することが難しいと思われる状況の中、30名強の職員の方々がご参加くださいました。

研修では、児童館にお越しくださる親子の皆様が、お家に帰ってから気軽に簡単に子育ての中で取り入れられる活動を、職員の皆様にお伝えし、現場でご紹介していただきたいという思いが強くありました。

楽器も教具もいらない、専門的なことがわからなくても、お母さんの体ひとつ、歌声があればどこでもすぐにお子様と取り組むことができるものをピックアップして、職員の皆様にロープレしてもらいながら、実際にリトミック活動での身体や心の反応を体験していただきました。

「子どもたちの日常生活」を題材に、身近な事柄を通じて、幼児にとって最も大切な感動体験を、楽しみながら音楽活動で実現することが、リトミック教育が大切にしていることのひとつです。

「活動を効果的に行うためにはゲーム性をもたせ、知的に遊ぶことが大切であり、そしてそれは喜びを伴うことになる」とリトミックを考案したダルクローズは言っています。

“喜び”は幼児にとって、すべての刺激の中で最も強いものなのだそうです。

リトミックの特徴的なテーマである「即時反応」では、音楽をしっかりと聴き、いつ訪れるかわからない合図をワクワクと待つ瞬間に、集中力、注意力、先を見通す力が総動員され、「自分で考えて行動する力」が育まれていきます。

子どもたちは合図が来たら即座に嬉々として反応して表現します。

合図が来るのをワクワクと心待ちに予感し、集中して聴き、自分で考えて自分だけの身体表現をすると(時に“動きを制してじっとする”という律する力が必要な表現もあります)、「合図が予想通り来たこと」「表現できたこと」に心が解放され満たされ、自己有能感でいっぱいになります。

そうした活動の中でリズミカルでクリエイティブな心と身体が育っていくのです。

そしてそれらは、「知識・技能」だけではなく「思考力・判断力・表現力」を一層重視する考えがベースとなっている大学入学共通テストや、平成29年、30、31年改定学習指導要領で掲げられている「資質、能力(コンピテンシー)の3つの柱」、すなわち生きる力にも通じるものです。

遊びの中で人間性の自然な発露を試みながら、集中力、注意力、表現力、律する力といった「非認知能力」が、喜びとともに育っていく。

とても素晴らしいことだと思いませんか?

だからこそ、特別な活動ではなく、絵本の読み聞かせのように身近で当たり前の自然な活動であってほしいと思っています。

この状況下だからこそより一層、音楽を通じた生のコミュニケーション、人と人の関わりのよろこびを届けたい。

そして私よりもずっと地域の子供たちや親御さん達と関わる機会の多い職員の方々にその思いを繋いで広げてくださることを願って登壇させていただきました。